阪神淡路大震災の後、私たちは救命救助機器の技術的な課題を検討しました. その中で、救命救助の活動や機器に関する研究はもちろんのこと、それらに関する啓蒙や広報の重要性を痛感しました。
そこで、レスキューシステムの拡充という大きな目標に向けて、継続性と求心力を得るための一つの手段として、救命救助活動を題材としたコンテストを行うことを提案します。 私たちはロボットコンテストを「教育」「科学技術」「社会性」の三つの軸で評価することを考えています。
もちろん、現実のレスキュー現場とここで考えている競技会場には雲泥の差があり、このコンテストで直ちに実用的なレスキュー技術が生まれるとは考えておりません。ただ,このようなコンテストに多くの方に携わっていただくことによって、レスキュー活動の大切さ, 難しさを考える機会を数多く提案できればと考えています.それによって、1,000個のアイデアの中から、たった一つでもいいから真に役立つ「輝くアイデア」が見つかれば良いと考えています。
ここは「国際レスキュー工学研究所」。この研究所では,レスキューに関する技術の評価と訓練のために、コンテスト形式で機材や運転の技術の高度化が行われている。研究所内には,大地震で倒壊した市街地を模擬した6分の1スケールの実験フィールドが構築されており、いままさにレスキュー訓練が開始されようとしている。
今回の状況の設定は次のとおりである。
ガレキの中には実験用ダミーが数体設置されている。
幸いダミーの設置場所は目視で確認できる。ただ、もしかしたら他の場所にも埋没していないとも限らない。
また、他のガレキは私有地にあるので、むやみに破壊し乗り越えてはいけない。
二次災害のおそれがあり、人間が立ち入ることが出来ない。
そこで,遠隔操縦のレスキューロボットの出動だ!
ロボットから送られてくる映像をもとに、一刻も早くガレキや障害物を取り除きダミーを探し、 優しく助け出し、安全な場所まで運ぶことが今回の任務である。
被災した市街地の数ブロックを表現した6分の1スケールの模型です. この中にレスキューダミーを配置します。
ロボットには無線カメラが搭載されており、オペレータ(操縦者)は実験フィールドを直接見ずに、カメラ画像だけを頼りに,無線による遠隔制御を行います。ただし、実験フィールドの全体像を把握するために、高い位置にヘリテレと呼ぶカメラを設置しています。ロボットは競技開始にはロボットベースに待機しており、スタートと同時にそれぞれのルートを通ってが実験フィールドに向かいます。
要救助者を模擬する人形です。加速度センサ・圧力センサなどが埋め込まれており、ダミーに過大な衝撃力が加えられた場合には減点の対象となります。
ロボットベースの出口には高さ60cm、幅70cmのゲートがあります. すべてのロボットはこのゲートをくぐらなくてはなりません。ロボットの寸法はこれらの条件をクリアする必要があります。それ以外には、多様なアイデアがでてくることを期待して、 制約はできるだけ少なくする方針です。
競技の評価は、作業に要した時間,救助活動の達成具合、ダミーに加えた衝撃の少なさ、および審査員評価などから決定します。また、競技前に、各参加チームに自分たちのアイデアや問題設定を発表することを課します。
そして,その内容も競技の評価に加味します。
競技において、最初にレスキューやロボットに対する考え方をアピールするプレゼンテーション(2分)を行い、次に作戦会議(2分)を行います。作戦会議では、ヘリテレカメラ(ヘリコプタからの映像を想定した高所からの映像)で撮影するカメラ映像を基に、要救助者にみたてたレスキューダミーの救助作戦を立てます。その後、レスキュー活動(10分または12分)を行います。
各チームのロボットは、ロボットベースから出動し、レスキュー活動時間内に3体のレスキューダミーを救出しなければなりません。レスキューダミーには、センサが内蔵されており、手荒な扱いを受けたかどうかを検知することができます。ロボットを操縦するオペレータはコントロールルーム内で主にロボットに搭載されたカメラの映像を頼りにロボットを遠隔操縦します。
競技では、いかに早く救助するかだけでなく、レスキューダミーに対する扱いのやさしさも重要な評価基準です。
レスキューロボットコンテストで最も意義深い賞です。この賞は、本選の総合ポイントだけではなく、書類やヒアリングも含む総合的な評価で決まります。
レスキュー活動の模範となるチームに与えられます。
遠隔操縦技術や遠隔操作システムの優れたチームに与えられます。
移動および救助機構、遠隔操縦システムなどに優れたロボットに与えられます。
チーム戦略などについて、優れたプレゼンテーションを行ったスピーカーに与えられます。
その他に、オフィシャルパートナーから授与される賞もあります。